転移・再発乳癌の根治は遠のいていく
いわゆる標準治療ー内分泌療法単独(AI剤やフェソロデックス)やCDK4/6阻害薬(イブランスやベージニオ)の併用では、ほとんど根治しない。
そもそも上の治療では、根治の前段階である、完全寛解に至る確率すら2%しかない。
しかも、上の治療をすると、ほとんどの遺残した癌の悪性化に関与する遺伝子に様々な変異が起こり、治療抵抗性を獲得する。
無治療の遠隔転移は根治し得る可能性がある。
しかし、根治を目指さない治療を行う事で、根治の可能性は徐々に低くなっていく。
partial EMT
がんは無秩序に増殖する能力は獲得しているが、本来転移能を持たない。
様々な環境、低酸素や低栄養、乳癌であれば、ER経路やHER2経路を介して、上皮間葉移行し、転移能を獲得する。
つまり、上皮系の癌細胞は転移出来ず、間葉系に移行した癌細胞が転移する、そう考えられている。
多くの他のがんでもそう考えられている。
ところが近年、完全なEMTを起こさず、その途中、partial EMTで止まった癌集塊の状態で転移する癌が見つかってきた。
そして、転移先で容易に上皮系に戻る。
増殖は間葉系変化した癌細胞より早いが、薬剤感受性が高く、根治する可能性がある。
その一つがルミナルタイプ乳癌の肺転移である。
つまり、内分泌療法に感受性のある肺転移は根治する可能性がある。
いや、「可能性がある」、というよりも、根治する可能性が高い。
再発乳癌の方のインスタグラム
私はこれまでSNSで転移再発乳癌患者さんの投稿を見たことが無かった。
最近何人も患者さんがSNSで発信されているという事を聞いて、Instagramを見てみた。
使い方が殆ど分からなく、まだ上手く見る事が出来ない。
調べ方も悪い様で、中々見れない。
最近使い方を調べて、どうもタグという物を付けないと、中々探せない事が少し分かった。
最近Instagramで、ようやくある再発乳癌の方の投稿を見る事が出来た。
お若い方で、お子さんがまだ小さい方だった。
ご本人は見た感じではまだお元気そうで、お子さんの可愛い日々をたくさんあげておられた、心和やかになった。
いつまでもお元気で、お子様の成長を見ていかれたら良いなぁと願った。
その時、最新の投稿の日付を見たら、5年前だった。
SNSの投稿は、今この時、この瞬間を生きておられる姿とは限らない事を知った。
1人でも多くの方を救いたい。
この様な方を1人でも減らしたい。
そう願って改めてこのブログを始める事を決意した。
『転移・再発乳癌が治らない』は本当か
転移再発乳癌でも治療によりその全てが消えて、その後長期にその状態を維持されている方はたくさん居られる。
いわゆる標準治療ではその様な方は殆ど見られない。
標準治療のゴールが『根治』ではなく、『延命』である限り、その結果は最終的に殆ど皆同じになる。
(日本の大学病院やがんセンター33施設のステージIV乳癌の5年生存率40.8%, 全がん協のデータより)
根治を目指せば、自ずと治療は異なってくる。
同じ治療(保険診療で認められている治療)を行っても、使う順序、量、組み合わせ等が異なれば、結果は全く違ってくる。
転移・再発乳癌でも、治る人は少なからずおられます。
ただ、いわゆる標準治療の順序で治療された方で治る人は殆ど居られない。
治りやすい乳癌②
もっとも転移巣が治療により全て消えやすいのは、未治療であること。
治療が入り、生き残った乳癌細胞は、その多くで治療抵抗性に関連した遺伝子の変異が増えたり、薬剤耐性遺伝子が高発現してきます。
ステージIからIIIまでで、手術前後に治療が入った場合にも、同様のことが多くの乳癌で起こります。
治りやすい転移乳癌①
乳癌はいつくつかのサブタイプに分かれています。
その中で遠隔転移巣が消えやすいのは、
① ルミナルタイプ
② HER2タイプ
③ ルミナルHER2タイプ(トリプルポジティブ)
これらは治療により、およそ80%の方で多くの転移巣の全てが検出不可能になるまで消えてしまいます。
トリプルネガティブはまだまだ難治性で、現時点でおよそ20%くらい。
これが今の私の感覚です。
現在、様々な薬剤が出てきています。
それらを上手く使うことによって、この割合が増えていく事を期待しています。